今回のBUILDで参加者全員に配布されたSurfaceですが、個人的に製品版となった Windows RT デバイスに触ったのはこれが初めてであり、私としてはいくつか確認したいことがありました。日本市場においてどのようなインパクトを持つことになるか、考えながらレビューを行っていきたいと思います。
[Bellevue Square の Microsoft Store にて]
Microsoft Store においても、ほかのデバイスも販売しているものの明らかに一押し状態になっている Surface です。店に来ている人もほとんどの人が Surface コーナーに足を運んでいました。店員さんに聞いたところ、毎日入荷してだいたい夕方までにその日の在庫がなくなり、品薄の状態が続いているとのことでした。
[展示中の Surface]
32 GB (Tablet only) が $499.00、32 GB with Black Touch Cover が $599.00、 64 GB with Black Touch Cover が $699.00 で販売されています。一時$199の噂もありましたが、実機を触ってみるととてもじゃないが$199で出せない感じのハードウェア的な質感がありました。Tablet Only が仮に50,000円を切る値段設定であれば、やはり日本でも競争力はあるように感じます。ある種のネットブック的なカテゴリーのものが成り立たなくなると思いますが、それはすでに Windows RT が出ることが決まった時から既定路線だと思います。
特徴的なアクセサリーとして、ハードウェアキータイプの Type Cover ($129)、薄いカバーの上にキーボードがプリントされているタイプの Touch Cover ($119)というものがあります。どちらもマウスポインタを利用可能なタッチパッドがついており、しっかりとタイプすることができます。接合面は強力なマグネットとなっていて、そう簡単には外れません。このアクセサリーが Surface を PC として成り立たせるために一役買っています。是非どちらかは入手しておきたいところです。(もちろん手持ちのこれまでのデバイスが使えるのでBluetoothキーボードとマウスでも構いませんが、専用にしつらえた良さがあります。なにより、携帯しやすいです。)
[箱を開けたところ。本体とACアダプターだけで余分なものは何も入っていない。]
購入してネットに接続し、Microsoft ID を入力すればすぐに使い始められるようになっています。残念ながら写真を取ることがd来ませんでしたが、ほぼ設定が終わった段階で「Welcome to PC」と出ていたのが印象的です。Steve Ballmer も PC meets Tablet form factor と繰り返し語っていましたが、あくまで PC であるとの考えなのです。
[ACアダプター。Windows RTのロゴが張り付けてあります。これを本体に張らないところにこれまでとの違いを感じます。]
[初期設定中の画面。丁寧にスワイプなどタッチ操作についてのムービーも流れました。]
Outlook が無いのが個人的に残念ではありますが、Office2013 がそのまま使えることは非常に快適で、Visual Studio やグラフィックツールを立ち上げるという状況でなければ、ほぼ完全にこの環境で事足りると感じました。特にOneNoteの使い勝手(OneNoteはストアアプリも並行して存在しますが)と、Skypeのスナップでの併用はこういう利用シーンがデザインされていたのだろうな、と思われる快適さです。動作は極めて軽快で、どのような作業でも早いと感じます。
一息入れてもう少し全体を見渡してみます。特にコンシューマー市場におけるコンピューティングにおいて、ブラウズやメール、Facebookなどのソーシャルネットワークの利用などの「情報の消費」の比率はとても大きいものです。それに伴って、メールなどもそうかもしれませんが、カジュアルなインプットを伴う作業もあります。ただし、このレベルのことであればiPadに代表されるタブレットで事が足りるはずです。この前提を踏まえ、家計簿を作る、PTAでの配布資料を用意する、学校に提出するレポートを書くといった作業についてはどうでしょうか。オフィスワークならいかがでしょうか。これらについては一定以上の「生産性」が求められます。これらは、iPadなどでも多く存在するノートをとるようなソフトとは明らかに違います。絵を描くものでもありません。創造的な作業ではありますが、生産性については問題があると思います。なぜなら、入力の仕方が圧倒的に異なるからです。
ペンで紙にものを書いていくことは生産性が高い行為であるか、ということを考えてみると、もちろん一定の生産性を得ることはできると思うのですが、再利用性や再現性の面で見劣りし、キーボードが長い間使われていたことは否定できません。私は ”PC” とは、”Productive Computing” となるのではないかと考えています。Computer が Personal であることは当たり前になったわけですが、特に GUI 定着以後オフィスを中心とした生産性を向上させるものとして PC が普及したことは間違いありません。そのための代表的なソフトウェアが MS Office になるわけですが、Windows RT にはそれが最初から装備されていることは非常に大きな、他社の埋めがたいアドバンテージだと思います。そして、それらはタッチベースの操作でも利用することは可能ですが、マウス+キーボードでの操作に皆が慣れ親しんでいるし、今のところもっとも生産性が高い方法でしょう。(将来的に頭にケーブルをプラグインできたりするようになって、即座に入力できたりするようになれば別だと思いますが)この環境のために、キーボードとマウスになるTouch Coverが用意されていて、デスクトップという一見分割された環境があるのだと思います。SteveBは Keyboard & Touch, work & play と参加者に力強く伝えていましたが、そこに「Productive and Creative」というのも個人的に一つ加えたいと思います。GUIを中心とした生産性の確保とNUIへのステップとしてのタッチインターフェイスによる創造性への拡大、Windows 8 のコンセプトのようなものが、RTという制限のあるデバイスを通じてこそはっきりと感じられました。テクノロジーの分岐点において、大変重要な位置を占めるOSになると思います。Surface は PC なんです。
また、非常にシンプルにWindows RT がかなりいける!と思った点を上げさせていただきますと、US仕様にもかかわらず設定で完全に日本語が利用可能な環境にできること(これは日本向けの出荷ではそもそも問題でもありませんが)、それ以上に純正のオフィスで純正のフォントが利用できること、になります。よくiPadについての質問で聞かれるのは、御社のアプリケーションを導入するとレイアウト崩れや文字化けが直りますか?という質問です。よく聞いてみると、iPadでワードやエクセルなどの表示が崩れているとのことなのですが、ほとんどの場合問題はフォントにあります。日本では圧倒的にMSPゴシックで文章が作られているケースが多く、それに合わせてドキュメントのレイアウトを調整している場合、代替フォントがあったとしても折り返しが発生したりして崩れる場合が多いのです。iPadそのもののレイアウト再現能力が低いわけでもなく、現に Windows での Verdana が iOS 上でも Verdana でしかないアメリカなどでは起きない問題です。電源を入れてすぐにMS系日本語フォントの搭載について確認したところ、MSPゴシック/明朝、MSゴシック/明朝、メイリオと全部そろっていました。これらのフォントを利用してビューワーだけでなくしっかり編集ができるフルセットのオフィスであることがとても大きな要素だと思います。
加えて、Flash もしっかりと動いていました。これで、Mixiでソーシャルゲームをやる奥様にも安心して渡せます。(iPadではダメな理由の大きなところは、Flashが見れないことでもあったのです)もちろん、ブラウザベースでアプリケーションを深く開発していたようなケースでも問題なく動くことでしょう。
もう一つ、Day1のキーノートの中で語られていたのがゲーム市場からの対応です。ゲームの市場においてはプラットフォームなどの多様性もあり、なんらかのフレームワークを利用して生産性を上げることが当たり前になっています。逆いえば、マルチプラットフォームにしなければ、開発費に対して収益のバランスが難しいから、とも言えるのですが。(このあたり、今度のセミナーで話をしようと思っています)ゲームはキーノートでも触れられていたように大きな売り上げを上げるアプリの大半を占めています。
[トップ売り上げアプリの75%はゲーム!]
逆に、ゲームがしっかり売れるプラットフォームであるかどうかは普及の下支えにも確実になるといえます。そんな中で、非常に有力なフレームワークであるUNITYの対応が発表されたことは大変うれしいことだと思います。現在のモバイルゲームタイトルの多くがUNITYベースで動いており、多くのアプリの「移植」が検討されるはずです。これらも特にコンシューマー市場においては普及をけん引する要素になるであろうことは間違いありません。
[コンポーネントやフレームワークの多くがWP8やWin8に対応]
繰り返しになりますが、ゲームは収益に対してシビアです。そのためには使えるものは何でも使うということは当たり前のように起きています。弊社もコントロールベンダーの一社として、否が応にも加速する開発ニーズに合わせて、皆さんのお役に立てるようなコントロールをタイムリーに提供していきたいと思っております。今後のビジネスアプリケーションについても、プラットフォームのスピード感に合わせた対応が必要になることが予想され、弊社もやるべきことがたくさんあると感じています。
[新しいWindowsUIコントロールです!日本でも準備しております!]
その上で、今回も BUILD で詳細に解説されているようなクリエイティブなアプリケーションが増えてくるための環境は整っているわけですから、唯一両方の世界を備えたハイブリッドのOSとして、 Windows 8 はこの時代に重要な役割を担い、次にやってくる世界への架け橋になることでしょう。
Surface、シアトルではかなり売れてました。Windows RT、私は日本でも売れると思いますよ!皆さんはどう思われますか?売れるとしてどうこの波に乗られますか?そんなことを考えていたシアトルの数日でした。